盆石は、真塗りのお盆の上に自然石を置き、白い砂をまいて森羅万象を表現する日本の文化です。日本の風土から生まれ、長い時代をかけて育てられました。古来から禅宗との深い関わりがあり、枯山水の庭や水墨画と共に発展してきました。また茶道では初釜や夜話の茶事をはじめ、さまざまな茶席で用いられて、小さな茶室を深山幽谷の境に変えてきました。現在では生活様式の変化にともなって盆石を目にする機会は少なくなってしまいましたが、日本の文化として茶道や華道とともに、時を超えて受け継がれています。
     
 盆石との出会いは、鎌倉英勝寺の茶会でした。 以前から禅の石庭をジオラマのように縮小して表現する構想をいだいていましたが、なかなか実現できませんでした。ところが25年ほど前、偶然に参加した茶席の床の間に、盆石という具体的な形になって存在していました。なんと何百年も前から存在していたのです。その時の驚きと感動はあまりにも大きく、現在までも褪せることなく続いています。また、最近になって先祖の遺品の中に盆石の道具が発見されました。詳しいことはわかりませんが不思議な縁を感じています。
    
 そんな運命的な出会いの後、教えをうけた細川流は、古くからの伝統をそのまま引き継いでいました。真塗りの盆に砂をまいて、羽根で描いたらそのままで完成です。砂を固定する工夫はいたしませんから、すぐに崩れてしまいます。花の命のように、ひと時だけの輝きで、はかなく崩れてしまいます。それは茶道における一期一会の精神と共通した、私たち日本人のこころの原点です。ですから盆石を打つたびに、無常に気づかされることになります。そして執着への愚かさと、いま・ここに生きる大切さを教えられています。
山本 梅仙